こんにちは。リユースファッション研究所を運営しております、田中美穂と申します。
このページをご覧いただき、ありがとうございます。少し長くなりますが、私がなぜこの分野に携わるようになったのか、そして皆さんにお伝えしたいことについて、お話しさせていただければと思います。
私がサステナブルファッションに出会うまで
実は、私が最初からファッション業界にいたわけではありません。慶應義塾大学の環境情報学部で学んでいた頃は、環境問題全般に関心があり、特に企業の環境経営について研究していました。
転機となったのは、大学3年生の時に参加したロンドンでの短期留学プログラムでした。現地で訪れたヴィンテージショップで、店主の方から「この服は50年前のものだけど、今でも十分に美しく着られるでしょう?ファッションは本来、こうして長く愛されるものなのよ」と言われたことが、今でも心に残っています。
その時初めて、ファッション業界が抱える環境問題の深刻さと、同時にその解決策の可能性について考えるようになりました。
三菱商事での7年間で学んだこと
大学卒業後は三菱商事のファッション事業部に入社し、7年間勤務いたしました。この期間は、私にとって非常に貴重な経験となりました。
商社という立場から、世界各地のファッション市場を見る機会に恵まれ、特に欧州とアジアのサステナブルファッション市場の調査を担当させていただきました。現地の生産者の方々とお話しする中で、環境に配慮したものづくりへの情熱と、同時に直面している課題の大きさを肌で感じることができました。
また、リユース・リサイクル事業の新規開発にも携わり、「循環型のファッション経済」という概念が、単なる理想論ではなく、実現可能なビジネスモデルであることを確信するようになりました。
ロンドン芸術大学での学び直し
商社での経験を積む中で、より専門的な知識を身につけたいという想いが強くなり、2018年にロンドン芸術大学のファッション・ビジネス修士課程に進学いたしました。
ここでの2年間は、まさに目から鱗の連続でした。ライフサイクルアセスメント(LCA)という手法を学び、ファッション製品の環境負荷を数値で可視化できることを知った時の感動は、今でも忘れられません。
また、世界各国から集まった同級生たちとの議論を通じて、サステナブルファッションに対する考え方が国や文化によって大きく異なることも学びました。この多様性こそが、この分野の可能性を広げる鍵だと感じています。
研究者として、経営者として
2019年に帰国後、株式会社サステナブル・ファッション・ラボを設立いたしました。「研究と実践の橋渡し」をコンセプトに、大手アパレル企業様のサステナビリティ戦略コンサルティングを行っております。
同時に、早稲田大学の客員研究員として、「循環型ファッション経済の構築」というテーマで研究も続けています。理論と実践、両方の視点を持つことで、より現実的で効果的な解決策を提案できると考えています。
失敗から学んだこと
順調に見える私のキャリアですが、実は多くの失敗も経験しています。
特に印象に残っているのは、2020年に発表した研究論文が、当初は学会で厳しい批判を受けたことです。「理想論すぎる」「現実のビジネスを理解していない」といったご指摘をいただき、正直なところ、とても落ち込みました。
しかし、この経験があったからこそ、より多くの企業の現場を訪れ、実際のビジネスの制約や課題を深く理解するようになりました。その結果、2023年には同じテーマで日本サステナビリティ学会の優秀論文賞をいただくことができました。
失敗は決して無駄ではない。むしろ、より良い解決策を見つけるための貴重な学びの機会だと、今では心から思っています。
データが教えてくれること
私の研究スタイルの特徴は、「データに基づいた分析」を重視することです。感情論ではなく、客観的な事実から導き出される洞察こそが、業界全体を動かす力になると信じています。
例えば、最近の調査では、Z世代の67%が「環境に配慮したブランドを積極的に選択する」と回答しています。これは単なるトレンドではなく、消費者の価値観の根本的な変化を示すデータです。
このような変化を数値で捉え、その背景にある心理や社会的要因を分析することで、企業の皆様により具体的で実効性の高い戦略をご提案できると考えています。
国際的な視野の大切さ
ファッション業界はグローバルな産業です。日本だけを見ていては、真の解決策は見えてきません。
欧州では既に、サーキュラーエコノミーの考え方が政策レベルで推進されており、2025年までにテキスタイルの分別回収が義務化される予定です。一方、アジア諸国では、リユースファッションの市場が急速に拡大しています。
これらの国際的な動向を日本の文脈に合わせて解釈し、日本企業の競争力向上につなげることが、私の重要な役割だと考えています。
TED Talkでの経験
2020年に行ったTED Talk「Fashion’s Future is Circular」は、私にとって大きな転機となりました。視聴回数が50万回を超え、世界中の方々からメッセージをいただいたことで、この分野への関心の高さを実感いたしました。
特に印象的だったのは、アフリカの若い起業家の方から「あなたの話を聞いて、自分の国でもサステナブルファッションのビジネスを始めたいと思った」というメッセージをいただいたことです。
研究や分析の成果が、世界のどこかで新しい挑戦のきっかけになる。これほど嬉しいことはありません。
家族との時間、そして趣味
仕事の話ばかりになってしまいましたが、プライベートでは、夫と二人で静かに過ごす時間を大切にしています。週末は一緒に料理をしたり、近所を散歩したりするのが何よりの楽しみです。
また、学生時代から続けているヨガは、忙しい日々の中で心を整える大切な時間となっています。研究で行き詰まった時も、ヨガをすることで新しいアイデアが浮かぶことがよくあります。
読書も大好きで、専門書だけでなく、小説や詩集も読みます。特に最近は、環境問題をテーマにした文学作品に興味を持っています。科学的なデータだけでは表現できない、人間の感情や体験を通じて環境問題を捉える視点は、私の研究にも新しい示唆を与えてくれます。
皆さんへのメッセージ
ファッション業界は今、大きな転換点にあります。環境負荷を減らしながら、同時に経済的価値も創出する「サーキュラーファッション」の実現は、決して夢物語ではありません。
しかし、この変革は一人の力では成し遂げられません。企業の皆様、消費者の皆様、そして政策立案者の皆様が、それぞれの立場で行動を起こすことが必要です。
私は、データと事実に基づいた分析を通じて、持続可能なファッションの未来を皆さんと一緒に描いていきたいと思います。一人ひとりの意識と行動の変化が、業界全体の大きな変革につながると信じています。
このブログでは、最新の研究成果や市場動向、海外事例などを、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。専門的な内容も多くなりますが、「なぜそれが重要なのか」「私たちの生活にどう関わるのか」という視点を大切に、執筆していきたいと思います。
最後に
長い自己紹介を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
もし私の研究や活動にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお声がけください。講演のご依頼、コンサルティングのご相談、研究に関するご質問など、どのようなことでも歓迎いたします。
また、このブログの記事についても、ご意見やご感想をお聞かせいただければ嬉しく思います。皆さんとの対話を通じて、より良い内容をお届けできるよう努めてまいります。
持続可能なファッションの未来に向けて、一緒に歩んでいきましょう。
田中美穂
サステナブルファッション研究者・コンサルタント
株式会社サステナブル・ファッション・ラボ 代表取締役
早稲田大学 商学学術院 客員研究員