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【2026年版】古着とは何か?定義・市場規模・流通経路をデータで網羅する基礎ガイド

ファッション業界が急速に変容するなか、「古着」への関心がかつてないほど高まっています。節約志向のある方がリユースショップに足を運ぶ場面はもちろん、サステナビリティを重視する企業が戦略的に中古衣料の取り扱いを始めるケースも増えてきました。「古着」というと以前は節約のイメージが先行していましたが、いまやサーキュラーエコノミーの最前線として世界中から注目を集めるビジネス領域へと変貌しています。

私は田中美穂といいます。慶應義塾大学で環境情報を学んだのち、ロンドン芸術大学でファッション・ビジネスの修士号を取得し、現在はサステナブル・ファッション・ラボの代表を務めています。早稲田大学商学学術院の客員研究員として循環型ファッション経済の研究にも携わっており、国内外のアパレル企業のサステナビリティ戦略コンサルティングも行っています。

この記事では、「古着とはそもそも何か」という基本的な定義から始め、最新の市場規模データ、そして実際の流通経路まで、データに基づいて体系的に解説します。古着ビジネスに関心のある方にとって、確かな基礎知識として役立てていただければ幸いです。

古着の定義を正確に押さえる

日常用語としての「古着」とは

「古着(ふるぎ)」という言葉は、一般的には誰かが一度でも着用した衣類を指します。ただし、現代の古着流通においては必ずしも「着用済み」に限定されません。保管中に長期間が経過したデッドストック品や、タグ付きの未着用品でも一般消費者の手に渡ったものは古着として扱われることが多いです。

時代的な定義という観点では、1990年代以前に製造された衣類を「ヴィンテージ」、それ以降のものを「古着」と呼び分ける慣習もあります。しかし業界全体として統一された基準があるわけではなく、販売事業者によって定義が異なるのが実情です。

法律上の位置づけ——古物営業法と「衣類」

日本において古着を商業的に売買する場合は、古物営業法の規制対象となります。同法では「古物」を「一度使用された物品」「使用されない物品で使用のために取引されたもの」「これらの物品に幾分の手入れをしたもの」と定義しており、衣類の中古品はこれに該当します。

古物営業法施行規則では古物を13品目に分類しており、衣類は「繊維製品、革製品等で、主に身にまとうもの」として独立したカテゴリに位置づけられています。このカテゴリには着物・洋服といった衣料品だけでなく、帽子や布団なども含まれます。

重要なのは、新品未使用品であっても、小売店から一般消費者の手に渡った時点で「古物」に該当するという点です。したがって、タグ付き未着用の衣類をフリマアプリで販売する場合も、事業として継続的に行うのであれば古物商許可証が必要になります。無許可での古物営業は罰則の対象となるため、ビジネスとして古着を扱う際は事前に確認が必要です。

混同しやすい用語との違い——ヴィンテージ・リユース・リサイクル

古着に関連する用語は混在しがちです。整理すると以下のようになります。

用語意味
古着一度流通した衣類の総称
ヴィンテージ主に1990年代以前の古着。希少性・時代的価値が高いもの
リユース物品を再使用すること。古着はリユースの一形態
リサイクル物品を原材料として再加工すること。衣類の繊維を再利用するケースなど

「リユース」はより広い概念で、古着はその一分野です。一方「リサイクル」は形を変えて別の製品になるため、古着(衣類としての再流通)とは区別されます。この違いを正確に理解することが、サーキュラーエコノミーを議論する上での前提となります。

日本の古着市場規模——最新データが示す急成長の実態

2023年〜2024年の国内市場規模

矢野経済研究所が2024年に発表した調査によると、2023年の国内ファッションリユース市場規模は前年比113.9%の1兆1,500億円を記録しました。そして2024年には1兆2,800億円(前年比111.3%)に達すると予測されており、2桁成長が継続しています(出典:矢野経済研究所|ファッションリユース市場に関する調査(2024年))。

これはファッションリユース全体の数値ですが、古着(中古衣料)はその中核を占めています。ひとつ前のコロナ禍(2020年)では行動制限の影響で市場の伸びが一時的に鈍化したものの、2021年以降は経済活動の正常化と相まって急加速しました。

市場成長を支える3つのドライバー

国内古着市場のこれほど急速な成長は、いくつかの構造的な変化が重なった結果と考えられます。

  • フリマアプリの定着:メルカリをはじめとするCtoCプラットフォームの普及により、誰でも簡単に古着を売買できる環境が整いました
  • Z世代の消費意識の変化:サステナビリティへの共感から、新品より古着を選ぶ若年層が増加しています
  • アパレル企業の参入:大手アパレルブランドが自社商品のリユースプログラムを展開するなど、業界全体として中古衣料の流通が活性化しています

国内主要プレイヤーと業態の多様化

国内古着市場では、業態が大きく3種類に分かれています。

まず、実店舗型リユースショップです。トレジャーファクトリーやブックオフコーポレーション(ハードオフ系列)などの大手チェーンが全国に店舗展開し、量と安定感で市場を牽引しています。

次に、オンラインマーケットプレイス型です。メルカリやヤフオクなどのCtoC型に加え、ZOZOUSEDのようなBtoCのオンライン古着専門サービスも急成長しています。

そして、セレクト系古着専門店です。特定のブランドや年代にこだわったキュレーション型の専門店は、ヴィンテージ需要を取り込み、高単価なビジネスモデルを確立しています。

世界の古着市場——グローバルに拡大するリユースの波

世界市場の現在地と2030年予測

世界規模で見ると、古着・中古衣料市場はさらにダイナミックな成長を遂げています。米ThredUpのデータによると、2023年の世界全体の古着売上高は約1,970億ドル(約30兆円)に達し、前年比18%増と過去最高を更新しました。さらに2028年までには3,500億ドル(約54兆円)規模に達する見通しです。

また同社の調査(2021年時点)では、古着市場は2026年に770億ドル(約8兆円)を超え、2030年にはファストファッション市場の約2倍に成長するとも予測されており、市場の持続的拡大は複数の調査機関によって裏付けられています(出典:古着市場、2026年までに8兆円を超える予測 2030年にはファストファッションの約2倍に)。

地域別トレンド——欧米・アジアの動向

欧米では、規制面からも中古衣料の流通促進が後押しされています。欧州連合(EU)は「テキスタイル戦略」を通じて衣料品の耐久性と修理可能性の基準強化、リユース促進のための政策を打ち出しました。消費者側でも「セカンドハンドは恥ずかしくない」どころか、サステナブルなライフスタイルの表明として積極的に選ばれる文化が広まっています。

アジアでは、日本製古着の品質の高さへの評価が高く、日本から東南アジアや中国への輸出が増加傾向にあります。財務省貿易統計によると、2024年の日本への古着輸入量は前年比2.1%増の9,739トンで、1kgあたりの単価は1,320円と2020年比で82%もの上昇を記録しています。これは、日本での古着需要が価格上昇を吸収しながら底堅く推移していることを示しています。

古着の流通経路を体系的に理解する

古着がどのようなルートをたどって消費者の手に届くのかを理解することは、市場構造を把握する上で欠かせません。大きく「回収・仕入れ」「業者間流通」「消費者への販売」の3段階で整理できます。

一次回収ルート:消費者から市場へ

古着の出発点は、一般消費者が衣類を手放す行為です。主な一次回収ルートは以下の通りです。

  • 店頭買取:リユースショップやブランドショップでの査定・買取
  • 宅配買取:発送するだけで査定が完了するオンライン買取サービス
  • フリマアプリ出品:メルカリ・ヤフオクなどを通じたCtoC直接取引
  • 回収ボックス・寄付:アパレルブランドや自治体が設置する回収BOXへの持ち込み

なかでも近年急増しているのが宅配買取とフリマアプリです。スマートフォン一台で気軽に出品・査定できる利便性が、これまで古着売買に縁がなかった層を巻き込む形で市場を拡大させています。

業者間流通:古物市場・卸売り

古着業者が仕入れを行う際に活用するのが「古物市場(こぶついちば)」です。古物商許可を持つ業者間での売買が行われるこの場では、大量の中古品がまとめて取引されるため、街のリサイクルショップよりも低価格での仕入れが可能です。近年はオンライン化も進んでおり、リアル会場に出向かなくてもビジネスが完結するケースも増えています。

また、海外からの卸仕入れ(輸入)も重要なルートのひとつです。アメリカやヨーロッパから古着を大量輸入し、日本国内で販売するモデルは定番化しており、古着専門の輸入業者も多く存在します。

消費者への販売チャネル

回収・仕入れた古着が最終的に消費者のもとへ届く経路は、大きく4つに整理できます。

  • 実店舗:古着専門店・リユースショップ・セレクトショップ
  • 自社ECサイト:古着屋が独自に運営するオンラインショップ
  • モール型EC:ZOZOUSED・楽天ラクマなどのプラットフォーム出品
  • CtoCマーケット:フリマアプリを通じた個人間取引

この多層的なチャネル構造が、現代の古着市場の特徴のひとつです。同じ衣類が消費者から買い取られ、業者間で転売され、異なるチャネルを通じて再び消費者に届くというサイクルが、複数の流通経路を介して繰り返されています。

国際的な流通——輸出入の実態

古着の流通は国内だけで完結しません。日本の古着はアジア諸国から品質面で高く評価されており、東南アジア(タイ・フィリピン・マレーシアなど)や中国への輸出が増加しています。一方で、アメリカやカナダからの古着輸入も多く、欧米のヴィンテージ品を求めるバイヤーが現地で買い付けを行い、日本国内で販売するビジネスモデルも根強く存在します。

このように古着の流通は、国内の一次回収から業者間取引、そして国境を越えた輸出入まで、複雑なネットワークの上に成り立っています。

古着市場を支える構造的な背景

ファッション産業の環境負荷——問題の深刻さ

古着市場の成長を単なる経済現象として捉えるだけでは不十分です。その背景には、ファッション産業が抱える深刻な環境問題があります。

環境省の調査によると、日本では年間約50万6,000トンの衣類が焼却・埋立処分されています。また、年間約73万トンの衣類が消費者の手から手放されている一方で、リユース・リサイクルに回るのはそのうち約35%にすぎず、残り約65%は廃棄されているのが現状です(出典:環境省|サステナブルファッション)。

繊維産業はCO2排出量の面でも大きな負荷をかけており、「ファッション産業は世界で最も環境負荷が高い産業のひとつ」と位置づけられています。こうした現状が、消費者・企業・政府それぞれの立場から古着・リユースへの関心を高めるドライバーとなっています。

サーキュラーエコノミーと古着の役割

「作って、使って、捨てる」という直線型(リニア)の経済モデルから、「使い続け、循環させる」サーキュラーエコノミーへの転換は、ファッション業界における最重要課題のひとつです。古着はこの循環の中核を担う存在であり、衣類の寿命を延ばすことで廃棄物を削減し、新たな資源消費を抑制する機能を持っています。

欧州では法規制によるサーキュラーエコノミーの推進が加速しており、EUの「テキスタイル戦略」をはじめ、各国でリペア・リユースを促進する政策が整備されつつあります。日本でも環境省が「サステナブルファッション」の普及啓発に取り組んでおり、消費者・企業・行政が一体となった循環型ファッションへの移行が求められています。

古着がただの「安い服」ではなく、環境と経済の双方に貢献するリソースとして再定義されている——それが2026年現在の古着市場の姿だと、私は感じています。

まとめ

今回の記事では、古着の基本的な定義から最新の市場データ、そして流通経路の全体像まで、データに基づいて整理してきました。

  • 古着とは「一度流通した衣類」を指し、法律上は古物営業法の衣類カテゴリに分類される
  • 国内市場は2023年に1兆1,500億円規模に拡大し、2024年は1兆2,800億円予測と急成長中
  • 世界市場は2028年に約54兆円規模に拡大する見通しで、2030年にはファストファッション市場の2倍超に
  • 流通経路は「消費者からの回収→業者間取引→消費者への販売」の3段階で構成され、国際的な輸出入も重要な役割を担う
  • 市場成長の背後には、ファッション産業の環境負荷という深刻な問題と、サーキュラーエコノミーへの移行という時代的必要性がある

ファッション業界の「もったいない」をビジネスへと変えていく古着市場は、今後ますます大きな存在感を持つようになるでしょう。データを正確に理解したうえで、消費者としても、ビジネスパーソンとしても、古着・リユースとの関わり方を戦略的に考えていただければ幸いです。