市場分析・統計

キッズ・ベビー用品リユース市場の成長性:少子化時代に拡大する子供服の二次流通

「1歳の誕生日を迎える前に、もうサイズアウトしてしまって」。
知人の子育て世代からそんな話を聞くたびに、私は複雑な気持ちになります。

サステナブルファッション研究者の田中美穂です。
商社時代に欧州・アジアのリユース市場調査を担当し、現在は循環型ファッション経済の研究とコンサルティングに携わっています。

2025年に日本で生まれた子どもの数は、67万人あまりでした。
10年連続で過去最少を更新し、出生率は1.14という過去最低の水準まで落ち込んでいます。

子どもの数がこれだけ減っているのに、なぜ「子供服の二次流通が拡大している」という話をよく耳にするのでしょうか。
この問いに、複数の統計データを手がかりに向き合ってみたいと思います。

少子化時代、子供服市場に何が起きているか

2025年出生数67万人という現実

まず、背景となる少子化の状況を確認しておきます。

nippon.comの人口動態統計解説によると、2025年の出生数(日本人のみ)は67万1,236人で、過去最少をさらに更新しました。
外国人を含めた総数でも70万5,809人で、前年から2.1%減っています。
合計特殊出生率は1.14と、これも過去最低です。
国の将来推計人口が想定していたペースより17年も早く、少子化が進んでいる計算になります。

このデータだけを見れば、子ども向け市場全体が縮小に向かうと考えるのが自然です。
実際、子供服の「新品」市場は、その通りの動きを見せています。

新品の子供服市場は「横ばい」が実情

矢野経済研究所が2025年に実施したベビー・こども服市場調査では、2023年度の市場規模は前年比102.6%の8,385億円、2024年度は前年比100.2%の8,405億円と予測されています。
3年連続でプラス成長ではあるものの、伸び率はごくわずかです。
しかもこの水準は、コロナ禍前の2019年をまだ下回っています。

新品市場が横ばいで足踏みするなら、二次流通(中古・リユース)だけが右肩上がりに拡大していてもおかしくありません。
そう期待しながらデータを丁寧に見ていくと、話はそう単純ではありませんでした。

二つのデータが語る、ベビー・子供用品リユースの実像

リユース市場全体は3.5兆円規模へ拡大中

日本のリユース市場そのものは、確かに拡大を続けています。

環境省が2025年6月に公表した令和6年度リユース市場規模調査報告書によると、2024年のリユース市場規模(消費者の最終需要ベース)は3兆4,986億円でした。
2021年と比べて2.8%の増加です。
自動車とバイクを除いた生活雑貨・衣料品などに絞っても、3.9%増という伸びでした。

業界紙によるリユース経済新聞の2025年版市場解説でも、2023年時点で3兆1,227億円だった市場が2030年には4兆円規模に達すると予測されており、拡大トレンドそのものは複数の調査で一致しています。

問題は、この拡大のなかで「ベビー・子供用品」というカテゴリーがどう動いているかです。
ここで、性質の異なる2つのデータが、対照的な姿を見せています。

業界売上ベースでは横ばい〜微増

1つ目は、リユース事業者の売上を積み上げた「業界売上ベース」のデータです。
リサイクル通信の「リユース市場データブック」を環境省が整理した資料によると、ベビーカー・ベビーベッド・ベビー服・チャイルドシートなどを含む「ベビー・子供用品」カテゴリーの市場規模は、2022年の411億円から2023年には429億円へと、4.4%増加しました。
リユース市場全体に占める割合は1.4%で、衣料・服飾品全体(18.9%)と比べると小さなカテゴリーですが、着実に伸びています。

消費者調査ベースでは、唯一の2桁減少カテゴリーという逆の顔

ところが2つ目、環境省が消費者への直接アンケートをもとに独自推計した「最終需要ベース」のデータを見ると、様子が一変します。

調査年度ベビー・子供用品の市場規模推計
平成24年度(2012年度)191億円
平成27年度(2015年度)181億円
平成30年度(2018年度)269億円
令和3年度(2021年度)212億円
令和6年度(2024年度)163億円

2018年度をピークに、直近の令和6年度調査では163億円まで落ち込んでいます。
令和3年度からの3年間でみると、金額にして約50億円、率にして23.4%の減少です。
同報告書は、この期間に10%以上市場規模が縮小したと推計された品目として「ベビー・子供用品」を名指ししています。
他の品目の多くが横ばいから増加傾向にあるなかで、これは目立った動きです。

業界の売上は伸びているのに、消費者調査では縮んでいる。
一見矛盾するこの2つのデータを、どう読み解けばよいのでしょうか。

担い手として見えてくる若い世代の存在感

金額としての市場規模は複雑な動きを見せていますが、「誰が中古のベビー・子供用品を買っているか」という購入者属性のデータには、もう一つの手がかりがあります。

同じ環境省調査によると、過去1年間にベビー・子供用品の中古品を購入した人の割合は、単純集計で2.07%でした。
ところが年齢・性別の構成を実際の人口比率に合わせて補正すると、推計購入者数は約234万人から約305万人へと、30.56%も押し上げられます。
これは調査対象になった22品目のなかでも際立って大きい補正幅で、購入行動が子育て世代という特定の年齢層に強く偏っていることを意味します。

実際、ベビー・子供用品の市場規模を年代別の構成比でみると、10〜20代が41%を占めています。
これは「バイク・原付」「ゲーム機器」「カー用品」に次ぐ水準で、22品目のなかでも「10〜20代」比率が40%を超える数少ない品目のひとつです。
金額としての市場規模は縮んでいても、当事者世代における浸透度そのものは、他のカテゴリーに劣らず進んでいる可能性があります。

「6ポケット」が変える子ども消費のかたち

少子化なのに単価が上がるという逆説

私はこの矛盾を、「取引の件数は減っても、1件あたりの単価や専門性が上がっている」という構造変化として読んでいます。

そのヒントになるのが、「6ポケット」という考え方です。
両親と双方の祖父母、合わせて6つの財布が1人の子どもに向けられるという意味で、少子化が進むほど子ども1人当たりにかけられる金額はむしろ増えやすくなります。

ランドセル市場に見る「量から質へ」の転換

この構造を裏づける好例が、ランドセル市場です。

ニッセイ基礎研究所が2026年3月に公表したレポートによると、2013年から2023年までの10年間で小学校1年生の人口は約12%減少しました。
その一方でランドセルの平均価格は約48%も上昇し、人口減による「量の縮小」を単価の上昇が補う形で、市場規模はこの10年以上拡大を続けてきました。
背景にあるのが、祖父母を含めた「6ポケット」による支出拡大と、購入時期を早める「ラン活」の広がりです。
「ラン活」とは、ランドセル購入に向けた情報収集や商品選びを指す言葉で、かつては入学直前だった購入時期が年中・年少の段階まで前倒しされる現象を表しています。
早期予約で人気モデルの品切れを避けたいという心理と、じっくり選びたいという意識の高まりが、この動きを後押ししていると私は見ています。

同レポートの著者である久我尚子氏は、「市場が縮む」ことと「1人の子どもへの投資が減る」ことは同じではないと指摘しています。
少子化が進むほど、子ども市場は「量から質へ」と重心を移していく。
私もこの見立てに強く共感します。

ただし同レポートは、2024年以降ランドセル市場が縮小に転じたことにも触れています。
少子化の加速が、価格上昇の効果をついに上回り始めたということです。
量から質への転換にも、限界はあるのだと思います。

子供服リユースにも同じ構造が読み取れる

ベビー・子供用品リユースのデータに、同じロジックを当てはめてみます。

消費者アンケートが捉えているのは、フリマアプリでの個人間取引から親戚間のお下がりまで含めた「取引の裾野」です。
子どもの絶対数が減れば、この裾野全体が縮むのは自然な流れでしょう。

一方、業界売上ベースの数字が伸びているのは、専門性の高い事業者やプラットフォームに取引が集約されつつあるからだと、私は考えています。
状態の良いブランド子供服を厳選し、きちんとクリーニングして再販する。
そうした「質」を担保する二次流通の受け皿に、6ポケットで潤沢になった予算が向かっていると、私は見ています。

二次流通の受け皿はどこに向かっているか

フリマアプリという「個人間」の受け皿

子供服の二次流通を支えるチャネルは、大きく2つに分かれます。

1つはメルカリや楽天ラクマ、Yahoo!フリマといったフリマアプリを介した個人間取引です。
サイズアウトが早く、状態のきれいなまま手放されることが多い子供服は、フリマアプリと相性の良い商材だとされています。
環境省の集計では、リユース事業者の国内小売りに占めるネット売上の比率は2011年の10.5%から2023年には34.5%まで拡大しており、個人間取引を含むネット経由の流通は年々存在感を増しています。
ただし個人間取引は出品や梱包発送の手間がかかるうえ、品質のばらつきも避けられません。

キャリーオンに見る専門特化型サービスの機能

もう1つが、子供服専門の買取・再販プラットフォームです。

子供服のオンライン買取サービス「キャリーオン」は、その代表例です。
サービスの特徴を整理すると、次のようになります。

  • 対象ブランドはミキハウスやファミリア、プティマイン、ニューバランス、パタゴニアなど300以上
  • サイズは50cmから160cmまで幅広く、マタニティ用品やベビー用品、靴・アクセサリーも対象
  • 送付した子供服が査定・買取された分がポイントに変換され、そのポイントで別の子供服を購入できる

不要になった服を送るとポイントが貯まり、そのポイントで次のサイズの服を買う。
この循環が、子育て家庭にとって「売って終わり」ではない継続的な関係を作っています。

「厳選して回す」という消費行動への変化

フリマアプリでの個人間売買と、専門プラットフォームでの厳選流通。
この2つが並走しながら、子供服リユースの裾野と質をそれぞれ支えている構図が見えてきます。

環境省の調査でも、ベビー・子供用品を手放した人のうち29.6%が「リユースショップ・中古品販売店に売却した」と回答しています。
親戚や友人へのお下がりだけでなく、専門店やプラットフォームを介した「販売」という選択肢が、確実に定着しつつあるのだと思います。

海外との比較で見えてくる、日本の伸びしろ

米国のキッズ・ベビーリセール市場は2030年に128億ドルへ

海外に目を向けると、この分野の成長ポテンシャルはより明確に見えてきます。

ThredUpが公表した2025年版リセールレポートによると、米国の中古市場は次のようなペースで拡大しています。

  • 中古アパレル市場全体は2024年に14%成長し、新品小売市場の約5倍のペース
  • キッズ・ベビーのリセール市場は2021年の70億ドルから、2030年には128億ドル規模へ拡大すると予測
  • 米国では約6割の親が、家庭の何らかのニーズに中古品を活用

数字の桁が、日本とは大きく異なります。

日本市場が次に迎える変化

日本のベビー・子供用品リユース市場は、金額でいえば数百億円規模にとどまり、米国のような成長曲線とはまだ距離があります。
ただし、少子化の進行スピードも、6ポケットによる単価上昇の圧力も、日本は世界のどの国よりも先を行っています。

量では測れない「質」の変化が先に表れやすい市場だとすれば、専門特化型の二次流通サービスが果たす役割は、これから一段と大きくなるはずです。
新品市場が横ばいで踊り場を迎えているいまこそ、二次流通事業者にとっては存在感を示す好機だと、私は見ています。

子育て世帯と事業者、それぞれへの提言

ここまでの分析を踏まえて、子育て世帯と事業者、双方に向けた提言を整理しておきます。

保護者にとっての合理的な選択とは

子育て世帯にとっての実践的な示唆は、「すべて新品で揃える」でも「とにかく安く中古で済ませる」でもない、中間的な選び方にあると私は考えています。

着用期間が数か月しかないベビー期の肌着や部屋着は、フリマアプリで気軽に個人間でやり取りする。
一方、卒業後もきれいな状態で残りやすいアウターやフォーマルウェア、思い入れのあるブランド品は、専門プラットフォームで査定・再販してもらう。
アイテムの性質によって流通チャネルを使い分けることが、家計にも収納スペースにも無理のない選択になるはずです。

二次流通事業者に求められる専門性

事業者側にとっての示唆は、もっとはっきりしています。
消費者調査ベースの市場規模が縮小する一方で業界売上が伸びているという今回のデータからは、「薄利多売」で件数をこなす戦略よりも、目利きと品質管理に投資する戦略のほうが、この市場では報われやすいと読み取れます。

キャリーオンのように、対象ブランドを絞り込み、査定基準を明確にし、ポイント還元で継続的な関係を作る。
こうした専門性への投資こそが、少子化下で「量」を追いかけられない事業者にとっての現実的な生存戦略になるはずです。
新品メーカーにとっても、この構造変化は無関係ではありません。
売って終わりにせず下取りや買戻しを組み込んだ販売モデルを持てれば、6ポケットが支える「質の高い一着」への需要を、自社の顧客接点として取り込める余地があると思います。

自治体や地域コミュニティが担う役割

もう一つ見落とせないのが、行政や地域コミュニティによる下支えです。
環境省の調査では、子供服の交換会や無料配布会を支援する自治体の取り組みが各地で報告されています。
人口規模の小さな自治体ほど民間の専門プラットフォームは手薄になりやすく、こうした草の根の仕組みが、フリマアプリや専門店では拾いきれない需要を補っていると私は見ています。
市場としての成長性を語るときも、こうした非市場的な受け皿の存在を無視するべきではないと思います。

まとめ

少子化によって、子供服リユースの「取引の量」は必ずしも増えていません。
環境省の消費者調査が示す通り、むしろ縮小している側面すらあります。

それでも、ベビー・子供用品カテゴリーの業界売上は横ばいから微増を保ち、専門特化型プラットフォームは着実に存在感を増しています。
量が縮むなかで質が問われる、6ポケット時代らしい変化だと私は捉えています。

子どもの数が減っていく時代に必要なのは、単純な「量の拡大」を前提にした市場予測ではありません。
どのプレイヤーが、どんな形で「厳選して長く使う」というニーズを受け止められるか。
その視点こそが、この市場を読み解く鍵になると私は考えています。