市場分析・統計

古着ECの売上構成比分析:カテゴリ別・価格帯別・季節別に見るオンライン古着市場の内訳

「古着ECは伸びているらしいけれど、実際には何が、いくらで、いつ売れているのか分からない」。
古着のオンライン販売に携わる方から、私はこの相談をよく受けます。

確かに、市場規模を伝える数字は増えましたが、トップスやボトムスといったカテゴリ別、価格帯別、季節別の売上構成まで一つの資料で把握するのは困難です。
しかし、環境省のリユース市場調査、上場企業の決算資料、フリマアプリの取引データを重ねると、古着ECの収益構造はかなり具体的に見えてきます。

私はサステナブルファッション研究者として、循環型ファッション市場の調査と事業支援に携わってきました。
この記事では、公開データで確認できる事実と、事業者が自社データで検証すべき領域を分けながら、古着ECの売上構成を読み解きます。

古着ECの市場規模を読む前に押さえたい前提

新品EC、CtoC、事業者リユースを分けて考える

古着ECの分析で最初につまずくのは、異なる市場の数字が同じ文脈で語られている点です。
経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査によると、2024年の「衣類・服装雑貨等」のBtoC-EC市場は2兆7,980億円、国内CtoC-EC市場は2兆5,269億円でした。

前者には新品衣料が含まれ、後者には衣料以外の幅広い商品が含まれます。
どちらも古着ECの成長余地を測る周辺指標にはなりますが、そのまま「オンライン古着市場の規模」と置き換えることはできません。

古着ECには、少なくとも次の取引が混在しています。

  • リユース事業者が仕入れた古着を自社ECやモールで販売する取引
  • 個人がフリマアプリやネットオークションで販売する取引
  • ブランドや小売企業が回収品を再販売する認定中古品の取引
  • 海外から仕入れた古着を国内ECで販売する取引

誰が販売し、どのチャネルで購入されたかを分けなければ、構成比の意味が変わります。
分析の出発点は「市場全体」「特定企業」「自社EC」の数字を別々の箱に入れることです。

公開データで分かる範囲と分からない範囲

環境省の令和6年度リユース市場規模調査報告書は、2024年の購入実態を、品目と購入先に分けて推計しています。
全国5万337人を対象とした事前調査と、購入経験者への本調査を組み合わせた資料で、古着ECを考えるうえで現在もっとも使いやすい公的資料の一つです。

ただし、同調査の品目区分は「ブランド品」と「ブランド品を除く衣類・服飾品」までです。
トップス、ボトムス、アウター、靴などの全国売上構成や、1取引ごとの価格帯構成、月別売上までは公表されていません。

そこで本記事では、次の順序で数字を扱います。

  • 環境省の推計から、衣類・服飾品の購入チャネル構成を確認する
  • 上場リユース企業の開示から、カテゴリ構成と季節性を読む
  • 個別サービスの実取引データから、カテゴリごとの価格差を確かめる
  • 公開されていない部分は、自社ECで計測すべき指標として整理する

この線引きがあれば、参考値を市場全体の事実と誤認せずに済みます。
精密な分析ほど、数字を増やすことより「何を含まない数字か」を明記する作業から始まります。

カテゴリ別に見る古着ECの売上構成

衣類・服飾品はオンライン比率が高い

環境省の推計では、2024年の「ブランド品を除く衣類・服飾品」市場は1,099億円でした。
購入先別ではネットオークション376億円、ネットショッピング147億円、フリマアプリ242億円で、オンライン3チャネルの合計は765億円です。

公表値を使って計算すると、オンライン構成比は約69.6%になります。
衣類・服飾品は、店頭だけでなく、検索、比較、出品がしやすいオンラインで大きく流通しているわけです。

環境省の品目区分市場規模ネットオークションネットショッピングフリマアプリオンライン3チャネル合計オンライン構成比
ブランド品を除く衣類・服飾品1,099億円376億円147億円242億円765億円約69.6%
ブランド品2,208億円333億円142億円234億円709億円約32.1%
参考合算3,307億円709億円289億円476億円1,474億円約44.6%

「参考合算」にはバッグ、財布、時計などが含まれる可能性があり、古着衣料だけの規模ではありません。
それでも、ノンブランドを含む衣類・服飾品ではオンラインが主力チャネルになっていること、ブランド品では店頭の比重がまだ大きいことは読み取れます。

高額ブランド品では、真贋への不安や実物確認の需要が店頭を支えます。
一方、日常着は価格比較と品ぞろえの広さが勝ちやすく、オンラインへの移行が進みやすい構造です。

事業者の売上では衣料と服飾雑貨が中核になる

企業開示を見ると、カテゴリ構成の輪郭がもう少し鮮明になります。
トレジャー・ファクトリーの2026年2月期決算では、リユース事業の売上474億1,500万円のうち、衣料が49.9%、バッグや財布、腕時計などの服飾雑貨が23.1%でした。

合計は73.0%です。
これは同社の店舗とEC、複数業態を含む実績であり、国内古着EC市場の構成比ではありませんが、総合リユース事業者にとってファッション商材が売上の中心であることを示す実例です。

カテゴリ売上高売上構成比前期比
衣料236億6,200万円49.9%117.6%
服飾雑貨109億3,200万円23.1%121.1%
その他のリユース商材128億2,100万円27.0%

衣料は販売点数を確保しやすく、服飾雑貨はバッグや時計によって単価を引き上げやすいカテゴリです。
売上構成比だけを見ると衣料が主役ですが、粗利額や在庫回転を重ねると、服飾雑貨が利益の柱になっている店舗もあります。

点数をつくるカテゴリと売上をつくるカテゴリは違う

古着ECのカテゴリ分析では、「売れた点数」と「売上金額」を分けてください。
低単価のトップスが100点売れた月と、高単価のアウターが30点売れた月では、販売点数と売上高の順位が逆転します。

メルカリの公開データでは、2025年9月にレディースセーター約5万1,680件、メンズセーター約1万2,120件の取引が成立しました。
「目立った傷や汚れなし」の平均取引価格は、レディースが約3,300円、メンズが約6,700円で、同じセーターでも性別区分とブランド構成によって約2倍の差があります。

スニーカーの公開例では、「目立った傷や汚れなし」の平均価格が約7,800円でした。
ニットとスニーカーを同じ「ファッション」だけで集計すると、価格差も回転差も隠れてしまいます。

カテゴリ別には、最低でも次の4指標を並べましょう。

  • 売上構成比
  • 販売点数構成比
  • 平均販売単価
  • 粗利額構成比

販売点数構成比が高く、売上構成比が低いカテゴリは集客役です。
反対に、販売点数は少なくても粗利額構成比が高いカテゴリは、広告費や鑑定費をかける余地があります。

価格帯別に見る古着ECの売上構成

5,000円未満が入口を広げる

中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の「古着店(2025年版)」では、20代以上の男女1,000人を調査しています。
古着店の利用経験者546人に1回の利用額を尋ねたところ、2,000円未満が44.3%、2,000円以上5,000円未満が36.3%で、合計80.6%が5,000円未満でした。

この調査は実店舗を含む古着店の利用額であり、古着ECだけの価格帯構成ではありません。
それでも、購入の入口で「低価格、お得感」が強く働くことは明確で、同調査でも古着店を選ぶ基準の首位は「低価格、お得感」の45.6%でした。

5,000円未満の商品は売上単価こそ低いものの、初回購入の心理的な壁を下げます。
送料が商品価格に対して重くなるため、2点購入、同カテゴリのまとめ買い、一定額以上の送料無料と組み合わせて採算を整える必要があります。

オンライン購入額はチャネルごとに差がある

環境省の推計では、ブランド品を除く衣類・服飾品を買った人の年間購入金額は、ネットオークションが1人当たり1万9,375円、ネットショッピングが1万5,870円、フリマアプリが1万293円でした。
ここでいう購入金額は1回の注文単価ではなく、過去1年間の購入者1人当たり金額です。

この差は、チャネルごとに購買目的が異なることを映しています。
ネットオークションでは希少品や趣味性の高い商品を競って買う動きがあり、事業者ECでは検品、採寸、返品対応への信頼が単価を支え、フリマアプリでは日常着を小刻みに買う行動が中心になりやすいからです。

単価を上げたいからといって、全商品を高価格帯へ移すのは危険です。
同じ商品でも、販売先に合わせて説明の深さ、写真枚数、真贋情報、返品条件を変えたほうが、価格への納得をつくれます。

価格帯は4層に分けて役割を管理する

全国統一の価格帯別構成比は公表されていないため、自社ECでは管理区分を決めて継続計測します。
次の4層は、日常着からブランド古着まで扱う事業者が構成を把握しやすい分け方です。

価格帯主な役割向いている商材管理上の注意
3,000円未満新規客と販売点数をつくるTシャツ、シャツ、量販ブランド送料と作業費が粗利を圧迫しやすい
3,000円以上1万円未満売上の土台をつくるニット、デニム、スニーカー、定番ブランド在庫量が増えやすく、回転日数の監視が必要
1万円以上3万円未満粗利額を積み上げるアウター、人気ブランド、状態の良い靴やバッグ採寸、状態説明、着用提案が成約率を左右する
3万円以上希少性と信頼で売る高級ブランド、ヴィンテージ、限定品真贋、補償、返品体制が欠かせない

これは市場統計ではなく、分析のための実務区分です。
自社の平均単価が低ければ境界を2,000円、5,000円、1万円に調整し、高級ブランド中心なら1万円、3万円、10万円へ引き上げます。

価格帯別に見るべきなのは売上構成比だけではありません。
各層について、販売点数、粗利率、返品率、出品から販売までの日数を追うと、「売れているのに利益が残らない価格帯」が見つかります。

季節別に見る古着ECの売上構成

秋冬は高単価商材が売上を押し上げる

古着ECでは、秋冬にアウター、ジャケット、ニット、ブーツが動き、平均販売単価が上がります。
ゲオホールディングスも2026年3月期第3四半期の決算説明資料で、衣料・服飾雑貨などの季節性により、グループ売上が下半期に偏る事業特性を明記しています。

同社資料はスマートフォンやゲーム商材も含むため、古着ECだけの季節構成比としては使えません。
ただし、複数年度にわたって第3四半期と第4四半期の売上が高い傾向は、リユース企業の在庫計画に下半期対応が必要であることを裏付けます。

メルカリでセーターが9月に約6万3,800件取引されている点も見逃せません。
冬物は寒くなってから売り始めるのでは遅く、検索需要は季節の入口ですでに立ち上がっています。

春夏は販売点数と回転率でつくる

春夏はTシャツ、シャツ、薄手のワンピース、ショートパンツなど、秋冬より単価が低い商品が増えます。
そのため、売上高だけで比較すると弱く見えますが、販売点数と新規購入者数を伸ばしやすい時期です。

薄手の商品は保管容積と配送費を抑えやすく、同梱もしやすいという利点があります。
「Tシャツ2枚」「シャツとボトムス」のように着用場面を組み合わせれば、低価格帯でも注文単価を引き上げられます。

夏物の役割は、冬物と同じ売上単価を目指すことではありません。
出品作業1時間当たりの販売点数、保管容積当たりの粗利、初回購入から90日以内の再購入率まで見れば、春夏商材の価値を正しく評価できます。

需要期より前に出品と仕入れを動かす

季節分析は「売れた月」を集計するだけでは不十分です。
仕入れ、検品、撮影、採寸、出品にかかる時間を逆算し、需要の立ち上がり前に商品ページを公開する必要があります。

販売期主力カテゴリ出品を厚くする時期管理の焦点
ライトアウター、シャツ、スニーカー1月下旬から3月気温上昇による需要の前倒し
Tシャツ、ワンピース、ショートパンツ4月から6月点数、まとめ買い、配送効率
ニット、デニム、ジャケット8月から10月立ち上がり速度と欠品防止
コート、ダウン、ブーツ9月から12月平均単価、粗利額、在庫残り

暦より気温が効く年もあるため、前年同月比だけに頼らず、週平均気温とカテゴリ別閲覧数を重ねてください。
閲覧数が上がり、購入率がまだ低い段階で在庫を追加できれば、値下げに頼らず需要を取り込めます。

カテゴリ・価格帯・季節を掛け合わせた実務分析

売上構成比だけでは利益構造を読めない

売上構成比は、事業の姿を一枚で示す便利な指標です。
一方で、古着は一点ごとに仕入原価、状態、撮影工数、保管期間が異なるため、売上比率だけでは採算を判断できません。

たとえば冬物アウターの売上構成が30%あっても、販売まで180日かかり、保管場所を占有し、シーズン末の値下げ率が高ければ、資金効率は落ちます。
反対に、3,000円のシャツでも7日で売れ、同梱率が高く、返品が少なければ利益への貢献は安定します。

構成比は「カテゴリ×価格帯×季節」の三つで切ってください。
「冬の1万円以上3万円未満のメンズアウター」「春の3,000円以上1万円未満のレディースシャツ」まで分けると、仕入れ判断に使える数字になります。

月次管理表で最低限追いたい指標

月次の管理表には、次の項目を同じ行に置きます。

  • 売上高と売上構成比
  • 販売点数と点数構成比
  • 平均販売単価と平均仕入原価
  • 粗利額と粗利率
  • 出品から販売までの日数
  • 期末在庫点数と在庫金額
  • 値下げ率、返品率、廃棄・再資源化率

特に見落とされやすいのが、期末在庫の構成比です。
売上構成比10%のカテゴリが在庫金額の30%を占めていれば、仕入れ過多か、価格設定のずれが起きています。

売上構成比と在庫構成比の差を毎月確認してみてください。
差が拡大したカテゴリは、追加仕入れを止め、再撮影、価格改定、別チャネルへの移管を先に実行します。

調達と物流までつなげて構成比を設計する

古着ECの品ぞろえは、販売画面だけでは完結しません。
国内回収、店頭買取、宅配買取、海外仕入れでは、入ってくるカテゴリ、サイズ、品質、ロットが異なります。

海外古着を扱う場合は、ベール単位で大量に仕入れた後の選別率が原価を左右します。
たとえば100着を仕入れても、EC掲載に耐える商品が60着なら、1着当たりの実質原価は仕入価格の60分の1に選別費、保管費、処分費を加えた金額です。

NIPPON47の「衣類と未来」では、日本・タイ・パキスタン・ドバイの拠点を生かし、古着仕入れ、ベール仕入れ、輸出入を支援しています。
こうした物流事業者と連携する際も、「何着仕入れたか」ではなく、EC掲載率、カテゴリ別販売率、再輸出率、再資源化率まで共有すると、調達の精度が上がります。

売れ残りを値下げだけで処理すると、粗利とブランド価値が同時に下がります。
国内EC、卸売、海外再流通、素材リサイクルの出口を先に設計しておけば、商品を次の用途へ早く移せます。

オンライン古着市場が向かう先

価格訴求と希少性訴求の二極化が進む

J-Net21の調査では、古着店利用経験者が店を選ぶ基準の45.6%を「低価格、お得感」が占めました。
その一方で、メルカリの2024年度調査では、好きなアパレルブランドやメーカーの中古品を購入したい人が66.7%に達しています。

消費者が求めているのは、単純な安さだけではありません。
日常着では価格と利便性を比べ、ブランド古着やヴィンテージでは希少性、状態、真贋、背景情報にお金を払っています。

古着ECは、低価格商品を大量に並べる市場と、少量の高付加価値商品を深く説明する市場へ分かれていきます。
両方を扱うなら、商品ページ、検索導線、配送、返品条件まで別の販売設計にしたほうが収益を管理しやすくなります。

売上構成比は衣類の循環を測る経営指標になる

環境省の2024年版衣類マテリアルフローでは、国内の衣類新規供給量は82.2万トンと推計されています。
大量の衣類が市場へ入るなかで、古着ECが担うのは販売額の拡大だけでなく、着用可能な衣類を次の所有者へ早く渡すことです。

そこで、経営指標に「循環速度」を加えることを提案します。
出品から再販売までの日数、仕入れた衣類のEC掲載率、一定期間内の販売率、売れ残りの再流通率を測れば、サーキュラーエコノミーへの貢献と在庫効率を同時に管理できます。

環境価値を広告文だけで語る時代は終わりました。
何着を再流通させ、何日で次の利用者へ届け、何着を廃棄せず別用途へ回したかを数字で公開する企業が、消費者と取引先の信頼を得ます。

まとめ

公開データから確認できる大きな特徴は、ブランド品を除く衣類・服飾品市場1,099億円のうち、オンライン3チャネルが約69.6%を占めることです。
一方、トップスやボトムス、価格帯、月別の全国構成比は公表されておらず、企業別・サービス別データを市場全体へ当てはめることはできません。

実務では、カテゴリ別の売上構成比に、販売点数、平均単価、粗利、在庫回転を重ね、さらに価格帯と季節で切り分けます。
まず過去12カ月の受注データを「カテゴリ×価格帯×販売月」で集計し、売上構成比と在庫構成比の差を確認してみてください。

古着ECの内訳を知る目的は、きれいな円グラフを作ることではありません。
どの商品をいつ仕入れ、どこで売り、売れなかった商品をどの循環経路へ移すかを決めることです。
数字が仕入れと再流通の判断につながったとき、売上分析はサーキュラーファッションの実装になります。